その日は突然やって来た。

梅雨空のある日。
少し忙しかった仕事に余裕が出来て、
久々に、大きな連休をもらった、初日だった。
本来ならば平日で、仕事に行かなくても良い開放感に、気が大きくなっていたのかもしれない。

朝からネットを見ていた私は、ヒゲ脱毛のことを思い出した。
ヒゲも、永久脱毛出来るのだろうか…?
以前から、時々考えていたことだった。
私はヒゲが濃い。
綺麗に剃っても、青々としていて、我ながら気持ちが悪い。
正直言って、ヒゲが無くなったところで、容姿が改善されるレベルではない。
それでも、ヒゲが無くなれば、多少はマシに…という気持ちもある。
そして何より、髭剃りが煩わしくてならない。
ヒゲを剃るのが面倒くさい。
肌が弱いせいか、よくカミソリに負けて、血が出るのも鬱陶しい。
3連敗したときは、泣きたくなった。
会社員の悲しいサガで、毎朝何分消費しているから一生で何時間…電気シェーバーに何円…などという、悲しい計算をしてしまう。
そう考えると、脱毛に数十万円かかったとしても、断然安い計算になってしまうのだ。

ネットで調べれば、値段も見当がつくだろう。
そう思って、ヒゲ脱毛の世界へ足を踏み入れたのだった…。

とりあえず予約…

ネットでヒゲ脱毛について調べているうちに、どんどんその気になってきた。
気がつくと、全体的にみて評判の良い、美容整形のクリニックの診察予約フォームを開いていた。

エステではなくて、病院を選択したのは、冷静!
(というか、どちらにも縁がないので、むしろエステの方が抵抗が強かった)
…と、冷静なわけもなく、軽率そのもの。
ネットで調べてから、まだ1時間しか経っていない。
おおよその脱毛の原理と手順はわかったものの、下調べとしては不十分だ。
ここで少し我に返ったのだが、それでもヒゲ脱毛の魅力は薄れなかった。
金額も安くはないが、予想していたよりは手の出しやすい値段だった。
それに、ヒゲがなくなるというのは、想像しただけでも楽しい。
とりあえず、専門家の話も聞いてみたくなっていた。

そこで、ひとつの賭けに出た。
(要は、考えるのが面倒くさくなった)
今日の午後に予約をして、予約がうまく行くようなら、挑戦してみる。
だめだったら、もう少し、時間を置いてみる。
そう決めたので、早速予約フォームに入力。
脱毛の部位がいまいち分からなかったが、ヒゲなので、口周り、アゴ、頬の顔三点セットを選択。
予約希望を、本日の午後に設定して、入力終了!

ネット時代。
便利になったものである。
…あとは、メールの返信が来るのを待って、しばらくのんびり…

予約の結果は

ネットをだらだらと見ていると、メールが届いた。
予約が取れたという連絡だ。
その日の午後を指定したのに、凄い。
しかし、よく見ると、予約が取れた時間は正午12時。
早い!

現在の時刻は、10時40分。
私は埼玉の人間だが、かなり郊外に住んでいる。
予約を取ったクリニックは首都圏なので、電車で1時間くらいかかる。
駅まで20分…。
たぶん、間に合わない気が…いそいで、準備をする。
まず、ヒゲだが、のばした状態で来るようにとのこと。
一日分のばしっぱなしだったので、ちょうどよいが、道中が恥ずかしい。
あとで、マスクでもするんだったと後悔することに。
あとは、契約に使うと思われる印鑑をもって、出発。

現金は一括払いを指定したので、途中のコンビニでおろす。
個人的には、クレジットカードは使いたくない。
駅に着くが、やはり間に合わなそうだ。
しかし、電話番号が分からない。
遅刻は非常にまずいが、そのまま向かうことに。

場所は、首都圏に近い県南の主要都市。
駅から10分くらいの、オフィスビルにあった。
この美容整形は、ひとつの階をまるごと借りているようだが、他の階は普通の会社。
よく考えてみると、ビジネスマンとエレベータで乗り合わせて、美容整形で降りるのは、少々恥ずかしい。
まあ、恥ずかしがるような年でも、風貌でもないか。
こうして、ヒゲ脱毛の扉を開けた…。

先生に脱毛の説明を受ける。

受付に遅刻を詫びて、問診票に答えを書く。
家族に知らせてあるか、連絡の際、注意する必要があるかという設問がある。
さすがというか、ちょっと感心。
それにしても、ヒゲの脱毛というのは、両親にとっては、どんな感情を抱かせるのだろう?
整形手術ほどは抵抗がないだろうが、少しイヤかもしれない。
伝えてもかまわない気がするが、きっかけがなければ、話さないだろう。

だいぶ待たされて…といっても、こっちの遅刻が原因だから、文句は言えない…先生の問診開始。
ヒゲの脱毛を希望していることを伝える。
その後再三言われることになるが、一番の問題点は日焼けをしていないことだという。
この点は問題なし。
レーザー脱毛は、メラニンの黒にだけ作用する光を当てて、毛を焼くので、日焼けしていると、実施できなくなってしまうらしい。
場合によっては、半年延期になったりすることもあるという。
とにかく日焼け厳禁だ。
また、この脱毛は、一度では完了しない。
1ヶ月おきくらいに訪れて、10回をひとつの目安に、完了となるらしい。
当然個人差はあるし、ヒゲの全くないツルツルの状態にになるというわけでもないらしい。
その他、問題点もきちんと説明を受けた上で、10回のコースを申し込むことに決めた。
長いつきあいになりそうだが、それに見合う結果が期待できそうだ。

受付に戻り、契約書に印鑑と、現金の支払い。
レーザー脱毛の実施は、あくまでお金の支払いが済んでから。
考えてみると、保険証の提示もないし、美容整形は、ものすごいドライな病院なのだな。
あと、照射後に、ニキビのような斑点がたくさんできることがあるというので、それに対する薬も購入。
じっさい、ニキビにも効果があるらしい。
高いが、それって結構ありがたい気がする。
レーザー脱毛の後は、ニキビのような症状が出ることを考えると、仕事ではマスクをしていくのが無難だろう。
また、日焼けの件もあるので、一番理想的なヒゲ脱毛開始時期は、秋くらいからだろうか?
インフルエンザや、花粉症の時期なら、マスクも自然。
(今年は新型インフルエンザのおかげで、夏でも神経質なヤツ程度で済むが)
日焼けのリスクも後半まで抑えられる。

レーザー脱毛・初体験。

実際の、レーザー脱毛開始。
最初に、鏡を見ながら、具体的な照射部位を決める。
ヒゲを剃らずにお越し下さい、だったのは、このためらしい。
無計画に慌ててきたので、一日分のヒゲを蓄えてきてしまったが、
これなら、半日分のびたヒゲでも充分だったと思われる。
アゴの下などは、かなりクビの方まで実施してくれるようで、ありがたい。
もみあげも指定できるので、気になる人は散髪してから来た方が、細かくお願いできるだろう。

問題は、頬の辺りのヒゲ。
数が少ないので、照射すると逆に濃くなる場合があるらしい。
少し迷ったが、念のため、照射してもらうことにする。
高いお金を払ったんだし、なるべくしっかりとヒゲを取り除きたい。
その後、電気シェーバーを渡され、ヒゲをきっちりと剃る。
ヒゲの根にレーザーを当てるため、照射の時はのびていない方がよいらしい。
次からは、しっかりヒゲを剃った状態で来た方がよいようだ。

目にレーザーが行かないように、アイマスクをして、ジェルを塗って、テスト照射。
レーザーとはいうものの、照射したときの感覚は、電気のビリビリに近い。

テスト後、いよいよ本番。
テストは毎回行なわれるらしい。
テストも本番も15分ずつくらい。
合計30分。
レーザーの出る機械で、顔中をなで回される。
ヒゲの多いところほど、ビリビリと痛い。
我慢できない痛さではないが、気持ちのよいものではない。
ヒゲの焼ける、独特のニオイも相まって、異様な状態だ。
ただ、初めての体験なので、その興奮が勝っていて、それほど苦にならなかった。
ひとつ気になったのは、アイマスクをしていても、目が光を感じた時があったこと。
真っ暗な部屋にいて、道沿いを車が通って、ヘッドライトが通過したような感じの光。
頬の辺りをなでられたときだ。
角度によって、肌を貫通して、眼球までレーザーが届くのか?
考えてみると、かなり怖い。
頬を照射して貰うのは、次から止めてもらった方がよいかもしれない。

とにかく、これにて終了。
診察券を貰って、1ヶ月後に予約を取って、帰宅。
顔がヒリヒリするが、想定の範囲内。
ニキビの薬と、塗り薬を貰ったので、使用する。

照射翌日…。

照射翌日になっても、それほど問題はなさそう。
気になるニキビも、薬が効いているのか、たいした量ではない。
正直言って、普段肌に気を付けていない私には、いつもと変わらないレベルだ。

2日目は、薬を使用しないことにする。
必要なければ、使わない方が無難…という話だったからだ。
ヒリヒリ感は、ちょっと念入りにヒゲを剃った後の、カミソリに負けるか負けないか…といった時の肌の痛さに似ている。
連休中なので、ヒゲも肌も気にしないでいられる。
最初の照射2~3回は、特に症状が出やすいらしい。

これからヒゲ脱毛を見当している方は、なるべく連休の初日を利用して、
照射直後に人前に出る機会を減らした方が無難だと思う。
それでも、長い場合は、2週間くらい症状が出ることもあるらしいのだが…。

はじめてのレーザー照射から3日目の問題点。

はじめてのヒゲ脱毛を体験してから、3日目。
肌の痛みは、すでに気にならない程度まで低下している。
私自身は、肌が強い方ではないと感じていたので、安心した。
薬も初日以外使用していない。

問題は、レーザー照射の時に感じた光。
あれ以来、目がチカチカする。
日常に問題のあるレベルではないが、少し気になる。
次の照射の時に、相談してみよう。

あとは、現金の支払い。
あのとき、ふわふわしていたので、ポンと支払ってしまった。
しかし、考えてみると領収書のようなものを一切貰っていない。
無いとは思うが、向こうが貰っていないと言い張れば、証明する手段がない。
迂闊だった。
社会人失格である。
念のため、クリニックへ連絡し、次の診察で領収書を発行してもらうようお願いする。
トラブルにならないと良いけれど。